Dr. Mutsuko Takahashi BLOG

ニューヨーク在住、英文学博士・個人投資家の高橋睦子【Mutsuko Takahashi】です。ブログへのご訪問ありがとうございます。

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フィッツジェラルドの文献:作品論

この記事では、フィッツジェラルドの文献から、作品論について書かれている本を紹介します。また、これらの本を選んだ理由も述べます。

 

 

Christian K. Messenger. Tender Is the Night and F. Scott Fitzgerald’s Sentimental Identities, 2014.

この本の著者メッセンジャーは、『夜はやさし』がフィッツジェラルドの繊細な感性の重要な要素を表しており、フィッツジェラルドの感性の力が強い審美性の力に発展することを観察しています。

 

彼は、ディックが職業的にも個人的にも他者との共感の精神を育む理由が、フィッツジェラルドの兄弟の喪失に関連していることを観察しています。彼は、フィッツジェラルドと彼の妻ゼルダとの関係もこの作品に影響を与えた理由の1つである可能性があると述べています。

 

彼は、『夜はやさし』におけるフィッツジェラルドの自伝的要素を強調しています。フィッツジェラルドの個人的な問題が彼を小説の創作に駆り立てただけでなく、彼の執筆の過程の中で妻への共感を育む機会になったことを観察しています。この本はアイデンティティの問題を探求するための深い洞察を提供しているので、私はこの本を選びました。

 

 

 

Alice Hall Petry, Fitzgerald’s Craft of Short Fiction, 1989.

 この本は、フィッツジェラルドが経済的理由のために短編小説を書いたという批判に対する反論をしています。そのため、フィッツジェラルドの短編小説の作成の詳細な背景に焦点を当てています。

 

この本の著者ペトリーは、フィッツジェラルドの短編小説こそが、彼の長編小説執筆の背後にある原動力であると主張しています。短編小説と長編小説のつながりを見出し詳細に述べているところが興味深いので、この本を選びました。実際、「リッツ・ホテルくらいに大きなダイヤモンド」、「赦免 」、「冬の夢」で展開する概念は、『グレートギャツビー』でさらに発展します。

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