Dr. Mutsuko Takahashi BLOG

ニューヨーク在住、英文学博士・個人投資家の高橋睦子【Mutsuko Takahashi】です。ブログへのご訪問ありがとうございます。

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論文のトピックから問題提起へ

論文のトピックは、明確に問題を提起し議論に発展していかなくてはなりません。

 

 

何がトピックを作るのか!?

トピックを選ぶ際に重要なのは、その選んだトピックがどうやって明確な質問を展開し議論に発展することができるかということです。また、トピックと研究課題が知的・専門的観点において自分にとって意味することはもちろん、他人にとってどのような意味を持つかということも重要なポイントです。それでは実際に、どうすればよいでしょうか!?

 

興味関心事をリストアップする

 自由な選択肢を与えられているほどに、トピック選びは難しくなります。そこで、どうすればよいか具体的な方法として、なるべく多くの関心ごとをリストアップすることが挙げられます。その際に、これを見て他の人がどう思うかということは考えずに、とりあえず自分が興味のあることを思うがままに全てリストアップしてみます。

 

リストアップした内容を狭める

トピックを狭めることは大事ですが、狭くなり過ぎないように気を付けなければなりません。なぜならば、狭めすぎるとデータを探すのが難しくなるからです。

 

リストアップした内容を狭める方法として、先行研究を探します。自分の興味関心事のリストアップができたら、次に他の人の研究が存在するかどうか先行研究を探します。他の人が既に研究していれば、自分の興味関心ごとが突飛な方向に行っていない証拠です。

 

先行研究を調べる際に、私はしばしばJSTORやEBSCOを使いますが、ログインが必要なので、これらのソースに誰でもアクセスできるわけではありません。所属の大学や研究機関でアクセス可能なものをお使いいただければと思います。

 

あるいは、インターネット上で探そうとする場合には、Google Scholarサーチエンジンを使うと便利です。一般のGoogleサーチと違って、研究者用の検索結果が出てきます。ちなみにWikipediaは一般用なので、参考にする程度にとどめておくとよいと思います。

 

トピックの焦点を狭める際のポイント

トピックを狭める際に重要なポイントは、選んだトピックがどのように明確な質問を展開し議論に発展し得るかということを常に意識することです。その際、トピックがより大きな構造においてどのように適合するか、あるいはより大きなシステムの一部として機能するかということも考慮に入れる必要があります。端的に言えば、異なる社会や文化においてどのような価値を提供するかということまで考える必要があるということです。

 

トピックの焦点が狭まったら

論文においては、選んだトピックから、明確な質問を提起し、答えを導き出すために議論を発展させ、その答えにつながる理論的根拠を提示していかなければなりません。選んだトピックからどのように問題提起をすればよいでしょうか!?

 

まず、問題提起の仕方として、誰が、何を、いつ、どこでということを念頭に置き、どうやって、なぜということに焦点を当てます。

 

意識するポイントは、そのトピックが今までどのように扱われてきたか、異なる社会・文化的背景における価値、そのトピックはどのカテゴリーに属するか、肯定的な面だけでなく否定的な可能性も考慮、もし~だったらという仮定的なケースを提示、先行研究で似たような質問がどう答えられてきたか、等。

 

質問内容に磨きをかける

可能な質問を出し切ったら、質問内容を洗練させます。それぞれの質問を自分自身で評価して、どの質問が論文で提起されるのにより適しているかを見極めます。その際に、新しい答えを導き出せる可能性を秘めているかということが重要なポイントです。避けるべき質問は、調べれば答えが見つかるようなこと、憶測でしか答えられないこと、答えがないようなもの、等。

 

一見重要に見えるような質問だけが、良い質問とは限らないことに注意します。というのも、ささいな事柄に関する質問が、思いもよらず重要な答えを生み出すことがあるからです。また、いくつかの質問を組み合わせてより一層大きな質問へと発展させてみるのも良いです。

 

その質問の重要性を考慮する

論文で提起される質問は、自分にとって重要なだけでなく、他人にとっても意義あるものである必要があります。その質問は、自分自身の興味を超えて、他の人にそれについて尋ねる価値があるのか、そしてそれはなぜかというものでなければなりません。

 

始まりは、自分自身の興味関心が発端となりますが、読者がいる限り、読者もまた答えを求めています。その答えは個人の好奇心を超えた答えでなければなりません。答えを追究する際に、他の人がその答えを重要だと思うかどうかというのは重要な観点になります。そしてプロジェクト全体でその答えに向かって取り組みます。

 

問題提起の具体的なステップ

  1. トピックに名前を付ける:何について研究しているのか?
  2. トピックを選んだ理由:なぜその研究をしているのか?
  3. 質問のモチベーション:それでどうしたいのか?

1番と2番は自分で自問自答できますが、3番に関しては第三者の視点を考慮に入れる必要があります。そのために有効なのは、Peerグループによる活動です。文字通りピア(仲間)グループの活動ということですが、研究者同士でグループになって、互いの力を発揮して質問を投げかけたりフィードバックを行います。それによって互いに力を出し協力して創造的な活動を行うことができます。

 

実際、博士課程の論文執筆のためのワークショップでもPeerグループによる活動を行っていて、正直なところ最初は自分だけで解決したいと思っていましたが、Peerグループによる活動を行ってみると同僚研究者が第三者の着眼点から質問をしてきて、その質問に答えるうちに、自分自身の研究の再確認だけでなく新たな展望が見えてくることもあって、とても有効だなと思いました。

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