Dr. Mutsuko Takahashi BLOG

ニューヨーク在住、英文学博士・個人投資家の高橋睦子【Mutsuko Takahashi】です。ブログへのご訪問ありがとうございます。

mutsuko takahashi

アメリカの博士課程のスケジュール

アメリカの博士課程のスケジュールの概要を書きたいと思います。

 

 

コースワーク:博士後期課程前半

博士課程の前半はコースワークです。「博士課程前半」というのは「博士前期課程 (修士) 」のことではなくて、「博士後期課程の前半」という意味です。修士課程の時と同じように、授業に参加します。博士課程まで残る人は少人数なので、授業も少人数です。ほとんどの場合は、1つのコースで2回の論文と、1回のプレゼンテーションがあります。1セメスターに3つのコースを取るのが理想です。

 

授業にただ出るだけではダメで、活発に議論が行われます。そのため、準備は不可欠です。日本の大学院では、外国語の書物を読むという特質から、一冊の本をゆっくりと時間をかけて、文法的なことからセミコロンの使い方による意味の差異などにも細心の注意を払って読みます。このやり方は、アメリカの大学院に入ってからとても役に立ちました。私の視点はアメリカ人の学生とは違っていて、それは日本で培った草の根を分けて調べ出す訓練をしてきたからだと思います。

 

一方、アメリカの大学院では英語は母国語なので、1つのコースで何十冊も本を読みます。1回の授業で最低でも小説1冊と論文3本は読みます。しかも授業内で読むのではなく、授業までに読んできて、授業では読んで理解した内容をもとに議論を行います。英文学科という特質上、ノンネイティブは私だけでした。そのため、アメリカ人学生の10倍の努力をするように、いつも心がけていました。

 

口述試験:ターニングポイント

コースワークを修了すると、後半は論文執筆となりますが、その前に重要な難関である口述試験に合格しなければ先に進むことができません。この試験は、たった一度だけのチャンスです。二度目のチャンスはなく、不合格の場合は博士課程を去らなくてはなりません。そのため、絶対に一度で合格することが必要な試験です。また同時に、合格すると研究者としてのターニングポイントとなります。

 

この先は、違う人になる必要があります。驚いたのは、日本では雰囲気で察する感じでしたが、アメリカの大学院では「違う人になる必要性」について、次のステップのワークショップできちんと教えられます。

 

論文執筆:博士後期課程後半

口述試験に合格すると、晴れて公式にPh.D. Candidateと認められます。最初の1セメスターは論文執筆のワークショップで博士論文や博士になるために必要なことを学びながら、同時に論文執筆を行っていきます。この段階になる前と後とでは、研究生活上まったく違うものになります。生物でいうならば、Metamorphosis (変態) によって今後は姿を変えて、プロフェッショナルなアイデンティティを構築するための、移行期間です。

 

この段階に入ると、ファーストネームで呼ぶことを許可する教授もいるくらいです。それだけ研究者として認められたということになります。まあ、私は他の研究者をファーストネームで呼ばないと思います。Drと呼ぶのが基本だと思います。

 

論文も、学生の執筆スタイルではなく、今後はプロの執筆スタイルになる必要があります。博士論文は、一冊の本と同じ長さの研究となる巨大プロジェクトです。

 

口述試験に合格後、論文執筆期間に突入した後の最初の1セメスターは論文執筆のためのワークショップとなりますが、その後はこれまでのように授業に参加する形ではなく、個人的に博士論文のアドバイザー、つまりコミッティーメンバーの3人の教授と連絡を取り合いながら、執筆を進めていきます。

20200822015235