フロイト:夢の作業
「夢」とは、無意識が意識的領域に侵入したために起こる現象であるということは、こちらの記事でお話しました。↓
フロイトの意識と無意識 - Mutsuko Takahashi BLOG
夢の理論についてはこちらです。↓
フロイトの夢理論 - Mutsuko Takahashi BLOG
この記事では、「夢の作業」に焦点を当てて、もう少し詳しくフロイトの「夢」の理論を見ていきましょう。
夢の作業
夢の作業の概要
それでは、「夢の作業」について説明します。キーワードは、「潜在化」と「顕在化」です。フロイトは、夢の大部分は歪んでいると主張しています。そして、その「歪み」の症状は、5~8歳頃から現れ始めます。では、なぜ「歪み」が起こるのでしょうか!?
その理由は、「夢の作業」において、「潜在的な」夢の内容が「検閲」を経ることによって別の内容に歪められるからに違いないと、フロイトは考えています。
つまり、「夢の作業」とは、もともとは「潜在的な」内容だった夢の原材料が、夢として「顕在化」する前に、「検閲」によって別の内容に変わるまでの作業のことを言います。
この部分は大事なので、もっとわかりやすく説明しますね。「夢」は無意識の領域にあったものが意識に出てきたものです。そのため「夢」が無意識の領域にあるときは、とても人に言えないどころか自分でも受け入れがたいほどの生々しい欲望に満ちた内容なのです。そしてここからが大事です。こんな欲望むき出しの内容は自分でも到底受け入れがたいので、「夢」として意識に出てくる前に、「検閲」という取り調べが行われて、意識に出てきても、まあそれほど恥ずかしくない内容に歪められるのです。
このように「潜在的な」内容を、他の内容に置き換えたり、隠蔽したり、削除したりする一連の作業が、「夢の作業」です。「夢の作業」は、4つの要素、圧縮、置き換え、視覚化、二次加工を含みます。それでは、それぞれ詳細を見てみましょう。
夢の作業の四大要素
圧縮
「圧縮」を通して、さまざまな概念が一つに圧縮されます。例えば、夢の中に女性が出てきたとします。その女性の顔は叔母だが、洋服は母のものを着ていて、バッグは友人のものを持っていて、全体的なシルエットは妻のように見えます。いろいろな要素が圧縮されて、一人の女性の姿として夢に出てきます。
置き換え
「置き換え」とは、あるものをそれに関連した別のものに置き換える機能です。例えば、夢の中であなたは馬をとても恐れているとします。しかし、実際にあなたが恐れているのは馬ではなくて父親であり、馬はこの場合あなたの父親を象徴しています。
視覚化
「視覚化」によって、思考が視覚的要素に変換されます。たとえば不安があるときは、迷路で迷子になるような夢を見ます。「不安」のような抽象的な概念は、物理的に見せることが難しいので、視覚的なイメージに変わります。フロイトは、この「視覚化」の活動を夢の形成に不可欠な要素であると考えています。
二次加工
「二次加工」は、夢の作業の歪んだ産物から、何か首尾一貫した物語的なものを作り出します。例えば、フロイトが論文の中で挙げている夢の症例、イルマ注射の夢、イタリアの友人の夢、彼の父の葬儀の夢など、すべての夢の症例はあいまいな部分を含みながらも、それぞれが首尾一貫した物語になっています。