Dr. Mutsuko Takahashi BLOG

ニューヨーク在住、英文学博士・個人投資家の高橋睦子【Mutsuko Takahashi】です。ブログへのご訪問ありがとうございます。

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発音は後回しでもいい!?

日本人特有の英語の苦手意識を作っている理由のひとつが、発音の問題です。自分の発音だけでなく、他人の発音まで気にしてこだわりすぎてしまうため、なかなか話せるようにならないというか、それ以前の問題として話したくなくなってしまうのです。

 

それでは、いったいどうしたら良いのでしょうか!?

 

 

まずは文法から!?

文法か発音か、どっちを優先すべきかと言えばまず間違いなく文法のほうが重要です。文法がでたらめだったら通じないし、それどころかぜんぜん違う意味にすらなってしまうこともあります。

 

発音がダメだったらスペルを言ってわかってもらえばいいし、ネイティブじゃないんだから、発音なんて完璧じゃないのがむしろ普通です。世界中の英語話者は、自国語訛りの英語を堂々と話してますので日本語訛りをひとつの文化の象徴としてどんどん喋ったら良いかと思います。

 

情報を得るのは目から、それとも耳から!?

「ぺらぺらなのに文章が書けない」という人の話を別記事で触れたことがありますが、アメリカに住んでいると、そういう人に遭遇することがあります。

 

私を含め、日本人だと書く方が得意な傾向にあると思うのです。私は新しい単語に会うと、どうしても綴りがわかるまでその単語が受け入れがたく気持ちがスッキリしないですし、また、私は綴りが得意だからかもしれませんが、言葉を聞いたときに、まるで印刷された文字のごとく、頭の中で綴りが浮かんできます。それだけ文字情報に頭を占領されてます!私は目から情報を得るタイプの典型です。

 

一方で、「ぺらぺらだけど文章が書けない」という人の特徴は、英語を勉強したことはほとんどなく、耳だけにもっぱら頼って身に付いたという傾向があるように思います。こちらは、もちろん耳から情報を得るタイプで、ごくまれに、このタイプが日本人にも存在していて実際に遭遇したことがあります。そのかわり、日本人の場合はちゃんと英語の勉強もしている人が多いため、もちろん文章も書けるんですが、日本人でこのタイプの最大の特徴は凄く早く英語を習得して、しかも上手だということです。これは習慣ではなく、持って生まれた天性のものだと思います。

 

識字率と発音の関係

驚いたことに、「目のタイプか耳のタイプか」というこの特徴は実はノンネイティブに限ってことではなかったのです。英語のネイティブスピーカーでありながら、実に聞き取りにくい英語を話す人がごくまれにいると思っていました。

 

それでその理由が、ある時にわかったのです。アメリカ英語のネイティブなのに、どういうわけか聞き取りにくい英語を話す人は何らかの事情で、字が書けないという人でした。

 

どういう話し方かというと、リエゾンが著しく、まったく綴りを意識しないしゃべり方だとでも説明するしかないような感じでした。そのため、幼児も似たような傾向があることを発見しました。単に幼さだけが理由ではなく、識字が関係していることを裏付けるかのようでした。

 

通常は、綴りがビジュアル化するとまではいかないものの、無意識レベルで綴りとかスペースとかが頭の中にあって字が書けると、話し方も変わってくるということです。

 

ノンネイティブは文法から

私たちが日本語の文法を勉強したことがなくても自然と日本語が文法通り喋れるのと同じに、英語ネイティブも、文法なんて勉強しなくても英語が文法通りに喋れます。

 

ただし、文法通りに喋れなくなる病気があるので、英文科の言語学や文学理論の必読書として、Roman Jakobsonの"Two Aspects of Language and Two Types of Aphasic Disturbances"という論文がありますが、専門性が高いので英文学の記事で別の機会に紹介したいと思います。

 

話を戻しますと、ネイティブスピーカーは幼少期の段階で自然と文法が身に付くのでわざわざ勉強する必要はないのですが、自国の言語の文法が既に身に付いている状態で大人になってから外国語を勉強する際には文法を勉強しないと、自然とは身に付かないということです。

 

どういうふうに身に付くかというと、文法を勉強して、繰り返し練習した結果自然と使いこなせるようになるのです。

 

発音の練習方法

基礎的な文法をちゃんとやってから発音の練習をしたら良いと思います。ただし、結局発音練習は必然的に後回しになります。

 

なぜ後回しになるのかと言うと、発音の最も効果的な練習方法は自分の話している英語を録音して聞いてみることで、聞いておかしいところを直して何度も録音しなおして練習することだからです。そのためには、どこがおかしいのか自分でわかっていないと直しようがないのです。

 

何が上手で、何が下手なのか、それがわかっていないといくら録音して聞いてみても、どこが悪いのかまるでわかりません。

 

そのため、既にリスニングをマスターして、ネイティブの話す正しい発音を聞いて、聞いて、聞きまくって、正しい発音と、自分の発音のどこが違うのか、それがわかったうえで真似をする必要があるので、発音練習する段階ではすでに耳では正しい発音がわかっている必要があるのです。

 

たとえるなら、音痴な人がどこが音痴なのかまったくわかっていないのと、何が上手かわかっているが自分は上手に歌えないというのとでは、全然練習成果が違うということです。

 

発音に関して誤解しないでほしいこと

まずは文法をやって、リスニングもやって、発音はその後でやる方がより効果的だと思います。誤解しないでいただきたいのは、ここで言う「発音」とは、訛りのことです。もちろん、単語ひとつひとつの発音は、単語を勉強する際に確認して、訛りはあっても、発音の間違いは良くないです。

 

例えば、カタカナは本当はだめですが、わかりやすくするために読み仮名を振りますが、indict (インダイト)のように発音がスペル通りではないものは特に気を付けないといけませんし、flammable (フラマボー)のように、flame(フレイム)だけの時と-ableが付いたときに母音の部分の発音が変わったりするのも注意が必要です。

 

日本語訛りでも良いです。本人さえ気にしなければ、ずっと日本語訛りで良いとすら思います。これが私の英語、私のアイデンティティーくらいに思って堂々としていれば良いです!

 

でも、単語レベルで間違って発音するのは良くないし、せっかく単語を覚えるのに、その際発音も一緒に覚えないのはもったいないですから、単語を覚える際に、発音は必ず確認しましょう。 

 

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