Dr. Mutsuko Takahashi BLOG

ニューヨーク在住、英文学博士・個人投資家の高橋睦子【Mutsuko Takahashi】です。ブログへのご訪問ありがとうございます。

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TESOLをノンネイティブが受講する意義とは!?

TESOLは英語教師の国際的な資格であることはTESOLのカテゴリーの最初の記事で

概要として書きました。

 

この記事ではもう少し詳細をノンネイティブがTESOLを取得する意義という観点から書いてみたいと思います。

 

 

私がTESOLを取得した理由

私の専門はあくまでも英文学であり、特に英文学の精神分析学的考察に力を入れています。しかし、英語が外国語である以上、また、すでに日本で英語教師の専修免許を持っている者としてさらに英語教育に対する理解を深めたいと思ったことがTESOLを取得しようと思ったきっかけです。

 

ノンネイティブがTESOLを取得する上で不利か!?

私はノンネイティブがTESOLを取得することは不利どころかむしろ有利だと考えています。実際にTESOLのコースを受講する中で、ノンネイティブだからこそわかる部分の発見が多くありました。私はノンネイティブですが、英文学の専門家ですので、ネイティブだけのプログラムに参加しました。ノンネイティブは私と、中東で英文科の教授としてすでに活躍されている方の二人だけで、あとは全員が英語のネイティブスピーカーでした。

 

そのようなネイティブスピーカーだけの環境の中で、改めてノンネイティブの強みを実感しました。英語を外国語として勉強するにあたって、文法や音声学はもちろん避けては通れない道としてこれまでやってきました。そのため文法や英語音声学の専門的な知識は、ネイティブスピーカーが到底及ばないほどのレベルであることは当然の結果として示されたからです。

 

それもそのはずです。私たちは日本語のネイティブとして文法や音声学の知識などまったくなくても流暢に日本語を話すことができます。それは英語のネイティブも同じことです。彼らは文法や音声学の知識が全くなくても流暢に英語を話すことができます。

 

私たちが、日本語の文法的な質問をされたとき、流暢に日本語が話せるにもかかわらず、日本語の語学の専門家でもない限り質問に対して適切に文法的な説明をすることはできません。

 

英語に関しても同じです。彼らは実に英語を流暢に話しますが、文法的な質問には答えられません。専門用語も知りません。文法的な質問に答えられないことは英語教師としては致命的です。英語学習者は文法的な説明を必要としているからです。

 

英語のネイティブスピーカーは 英語を自然にしゃべれるようになったのであって、英語を勉強してしゃべれるようになったわけではありません。一方、私たちノンネイティブは、自然に英語をしゃべれるようになったわけではなく、英語を一生懸命に勉強した結果、語学習得に至ったのです。そのため、流暢さに関してはネイティブに勝ち目はありませんが、文法や音声学的な知識はノンネイティブの方がはるかに長けているのです。

 

また難しすぎる単語に関しても強みがあります。実際、アメリカ人が知らないような単語をめぐって、私と中東の英文科の教授だけが通じ合って微笑み合いました。他の英語教師を目指しているネイティブの学生や、英語教師のための教師までもが、単語の意味が分からずにきょとんとしていた感じでした。

 

ノンネイティブにしかわからないことがある

ノンネイティブは英語を自然に習得したのではなく英語の習得は積み重なる努力の結果のもとに成り立っています。そうした意味で、知識的なものはもちろんですが、生徒の気持ちや、疑問が生じやすい部分、間違えやすい部分が手に取るように良くわかります。なぜならばすべては自分も過去に経験したことだからです。この視点は、ネイティブにとっては盲点であり、ノンネイティブだからこそわかることです。

 

生徒は全員ノンネイティブなわけですから、教える側もまた同じ経験をしてきたノンネイティブとしてアドバイスできる部分があるだけでなく、自分も頑張れば、教えれるレベルにまでなれるかもしれないという激励や夢までも与えることが出来るのです。

 

そのため、ノンネイティブだからといって引け目に感じる必要はないというのが私の意見です。むしろノンネイティブにしかわからない視点をどんどん生かして、ネイティブではできないことを追究しましょう。

 

発想の転換が大事

私はこのマインドを文学研究に生かしています。私の専門は英文学なので、英文学も専門的なレベルになると大学院の中でいつも私だけがノンネイティブでした。自然な英語を扱えるかどうかについてはネイティブに勝ち目はありませんので、私が常に心掛けてきたのは、論文や発言の内容で勝つことです。そのため、ネイティブの10倍は努力することを常に目標として、「いったい日本人の頭の中どうなってるんだ!?」って相手に思わせるくらい内容だけは誰にも負けないように頑張る努力を重ねました。最初は「なんだノンネイティブか」と軽く見られていても、内容で勝負すれば、次第に皆が "Wow!"って一目置くようになりますし、実際にそうなることは身をもって体験しました。

 

このような考えは、『うさぎとかめ』を想起させます。このカメはおそらくリクガメだと思うので当てはめられませんが、説明をするために、ミズガメだと想像してみてください。うさぎがたまたま居眠りしたからカメが勝っただけで普通はそんな状況はめったにありませし、この勝利はカメの実力ではありません。ところが、うさぎが本気を出してもカメが(ミズガメの場合)勝つ方法があります。それは勝負を泳ぎに持ち込むことです。

 

現実の世界においても、自分の有利な方向に勝負を持ち込むことは重要です。ノンネイティブであることをマイナスにとらえないでむしろプラスの方向に変えれるように努力して、自分だけにしかできないようなことを目指すことがプロセスにおいても大事だし、結果的にも良い方向につながっていくと思います。 

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